
理 事 長 挨 拶
この先のさらなる80年を見据えて
愛の泉のホームページへようこそお越しくださいました。
愛の泉は、1945年12月25日、戦後の混乱期に最も厳しい状況に置かれていた戦災孤児や、親の保護を受けられなくなった乳児たちの命を守る場所として、加須の地で歩みをスタートさせました。以来80年、私たちは時代の変化とともに、身寄りのない高齢者の方々や、子育て中のご家族など、様々な困難を抱える方々への支援を広げてまいりました。在宅介護支援やショートステイ事業、そして子育て支援制度の整備など、地域社会のニーズに応えるべく、常に新たな挑戦を続けています。
愛の泉の設立に深く携わったゲルトルード・エリザベート・キュックリヒ宣教師は、「神が私たちを愛してくれたように、私たちもまた、社会において最も小さい人、最も困難を抱えている人に愛をもって仕えるのだ」という使命をその人生を賭けて実践しました。この尊い使命を受け継ぎ、80年もの長い歳月を重ねてこられたのは、決して平坦な道のりではありませんでした。社会課題に直面するたびに、私たちの弱さや限界にぶつかり、悩み、祈り、そして再び一歩を踏み出す。その繰り返しの中で、私たちは皆様からの温かいご支援に支えられ、今日まで歩みを進めることができました。皆様の長年にわたるご支援とご理解に、心より感謝申し上げます。
社会へ送り出し、迎え入れる場所として
今、私たちの社会は、設立当初とは大きく異なる課題に直面しています。少子高齢化や世代間の分断、福祉財政の持続可能性など、先行きの不透明さは人々の不安を増長させています。このような時代だからこそ、地域における社会福祉の担い手としての私たちの倫理観、使命感、そして情熱が問われていると強く感じています。
80年もの長きにわたり、「加須に愛の泉あり」と言われるほど、地域の皆様に受け入れられ、ともに支え合い、信頼関係を築き上げてこられたのは、私たちの実践の土台に「神様から愛されている私たち一人ひとりが、神の愛の担い手なのだ」という揺るぎない信念があるからではないでしょうか。
私たちは、子どもたちを愛をもって育み、社会へとたくましく送り出します。そして、地域で長らく生きてこられた方々が安心して戻ってこられる場所として、常に扉を開いています。愛の泉は、子どもたちが未来へ飛び立つその背中をそっと押し、そして人々が帰ってくるその背中を温かく迎え入れる場所なのです。
進むべき方向は指し示されている
社会が混迷を深め、分断と対立、不安と不信が渦巻く時代だからこそ、人間一人ひとりが存在することそれ自体が尊く、神の愛が注がれているかけがえのない存在であるという確信が何よりも大切です。私たちは、福祉の専門職としての知識と倫理観に裏打ちされた愛と情熱をもって、小さな人、弱い人の困難に常に寄り添い続けたいと、80年の節目に改めて強く思います。
神の愛の実践者としての理想の姿は、私たちのはるか先にあります。その理想に到達することは不可能かもしれませんが、私たちの歩みが止まることはありません。悩み迷うときも、進むべき方向を指し示してくれる神がいるからです。私たちは、自分自身のためだけに生きるのではなく、日々のパンのためだけに生きるのでもありません。これからのさらなる80年も、加須の地で、神の愛の実践者として敬い祈りをもってともに進んでまいります。
最後に、愛の泉とともに歩んでくださる皆さまに、この聖句を送りたいと思います。
「あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう。」(「マタイによる福音書」23章11、12節)
理事長 潮田花枝